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「人間中心の経営改革」による長期的視野のパラダイムシフトを

2024.11.8

2024年3月、経営トップ層へのプロフェッショナルサービス提供を目的とする新会社、ENND PARTNERSが設立されました。「人間中心のデザインと経営インパクト」という同社設立の基本精神、また事業の概要について、共同創業者であるティム・ブラウン、岩渕匡敦の両氏が語り合いました。

写真左:ENND PARTNERS CO-Founder & CEO 岩渕 匡敦
写真右:ENND PARTNERS CO-Founder & Principal Advisor ティム・ブラウン

写真左:ENND PARTNERS CO-Founder & CEO 岩渕 匡敦 写真右:ENND PARTNERS CO-Founder & Principal Advisor ティム・ブラウン

ENND PARTNERS設立の背景

岩渕: 
今日、企業経営におけるアジェンダ設定は、困難を極める状況です。気候変動の影響、社会の分断・紛争、また企業活動そのものの社会的インパクトなど、意思決定上、考慮すべきテーマは多岐にわたります。こうした広範な経営課題に対処し、グローバルな持続的成長を実現していく上では、人間中心の視点で経営や社会のあり方を大胆にデザインし直すことが欠かせません。 博報堂DYグループは従来、広告・マーケティング領域を主戦場としてきましたが、生活者発想によるクライアント支援のさらなる強化に向け、新中期経営計画のもと抜本的な業容拡大を進めています。博報堂DYホールディングスの戦略事業組織kyuの各社が欧米で顕著な実績を持つ人間中心の事業を経営的な目線で進化させ、日本やアジア各国において、より大きなインパクトをもって展開するため、新会社の設立に至りました。

ブラウン:
コンサルティング業界では、過去の事例の分析を現在の経営状況に適用する「科学的」アプローチが主流です。しかしながら今日、それだけでは対処できない新たな複合的課題が山積しています。重要なのは、経営科学に基づく分析的知識と人間中心のクリエイティビティを組み合わせ、最適なバランスを取ることです。私の見るところ、従来型コンサルティング企業の多くは、この取り組みが両立できていません。日々のコンサルティングを通じた知識の蓄積・発展と、人間中心のクリエイティビティの対等な融合。それは、経営分析における最重要の課題であると同時に、私たちにとって大きなビジネスチャンスを意味するものです。

3層のステークホルダーへのアプローチ

岩渕:
これまで多くの企業経営者と対話を重ねる中、改めて浮かび上がってきたのが「人」の問題です。各社とも、専門的なコンサルタントを雇いつつ、デジタルやM&Aなど個別領域で様々な戦略を策定しています。そうした戦略の多くは、人々の実際のアクションにつながらないため、有効に課題を解決することができない場合もあります。だからこそ、私たちは「人」に着目するのです。人間性への知見に基づく「形」づくり——つまり、ブラウンさんの言う「広義のデザイン」を起点に、戦略的に人々を動かし、長期的な経営変革をサポートしていきたいと思います。

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"「人間性」を起点に変革の兆しを見つけ、志ある日本の経営層を長期的視野でサポートします"(岩渕)

ブラウン:
当社は「理想的な事業のプレゼン資料を作成し、そこからはクライアントに任せる」といった、企画に特化したアプローチとは一線を画します。クライアントには私たちと一緒に、あるユニークな世界を長期にわたって旅し、その没入体験を行動変容のモデルとしていただきたい。当社とのコラボレーションがお客様にとってインスピレーションに満ちた、楽しい有意義な体験であってほしいと強く願っています。

岩渕:
私たちの言う「人」とは生活者であり、より具体的に言うと、クライアント企業の「顧客」「従業員」そして「経営層」を含む概念です。これら3層のステークホルダーを意識して、それぞれ特色あるサービスを展開していきます。 まず、顧客との関係では、ブランド経営の観点から経営構造そのものを抜本的にデザインし直します。これは特にグローバルな成長を志向する企業を対象としたアプローチです。 次に、従業員のパフォーマンス向上。個々の創造性を刺激して行動変容を促し、組織風土の変革と業績向上につなげていきます。kyuメンバーのSYPartnersが世界的大企業をクライアントとして展開する、「アクティベーション」と呼ばれる手法です。 そして最後に、経営層のエクスペリエンス向上。内外で多くの経営課題に直面しつつも、改革を志す企業トップに向け、対顧客、対従業員の視点を踏まえた「変革アジェンダ」の設定を支援します。また、戦略・デザイン・データ・AI・業務プロセスなど広範な領域をカバーするチームが、従来にない包括的サポートを提供していきます。

ブラウン:
今日、多くの企業は目の前の諸課題への受動的対応に終始しています。しかし重要なのは、自ら主体的に将来あるべき姿のビジョンを描き、その実現のため努力を惜しまないこと、変革を通じた競争力向上、統合的価値の増大を目指すことです。私たちはそういう志を持った会社をサポートしていきたい。日本の企業社会には、こうした素地がある程度備わっています。つまり、企業活動の社会的・経済的インパクトを絶えず意識し、より良いバランスを志向する考え方が、もともと内在しているのです。それが今回、私が岩渕さんとタッグを組みたいと思った大きな理由の1つです。こうした日本企業とともに働くことができるのを、私自身非常に楽しみにしています。

ブラウン:
当社のもう1つの強みは、人財の多様性にあります。私と岩渕さん、そして他のチームメンバーもまた、みな異なる経験、実績の持ち主で、それぞれ経営改革に関する豊富な知見を有します。さらに当社は、博報堂DYグループの一員でありkyuとも密接に連携しています。グループ内の多様な経験を活用しつつ、サイエンス(経営科学)とアートの2つの側面から、より実効的な経営改革を推進することができます。

岩渕:
当社のメンバーは、デザインやアート、経営戦略や組織論といった領域で、幅広く深い知見を身につけています。今後増やしていきたいのも、こうしたユニークな領域を持っている、もしくはそれを志向する人たちです。また、当社が目指すのは、世界トップレベルの新たなプラクティスです。グローバルなマインドセットや、他者へのリスペクトを持ち、かつ専門外の領域にも積極的好奇心を持って研鑽を絶やさない人財、世界中の様々な人々との連携に喜びを感じられるような人財に集まってきてほしい。さらには、アカデミアであれ企業やパプリックセクターの方であれ、同じ志を持つ人々に、私たちの輪にどんどん加わっていただきたいと願っています。

人間中心のデザインがもたらす未来

岩渕:
日本経済の先行きには悲観的な見方が広がっています。人口が3分の2のドイツにGDPで抜かれたことも大きな話題になりました。しかし逆に考えれば、日本経済の生産性や創造性には、それだけ向上の余地があるわけです。実際、この国は教育レベルも高いですし、ポテンシャルは非常に大きい。人財がいないのではなく、むしろ企業の側がそうした人財の能力をうまく事業価値に転換できていないことが問題なのです。そしてそこに、人間中心のデザインが有する大きな意義があります。創造性やコミュニケーションといった、企業経営で従来軽視されてきた要素を導入することで、人々がいきいきと働きながら、生産性が向上し、新規事業が次々誕生するような好循環を実現できる。こうして日本経済本来のポテンシャルを解放し、より大きな付加価値創出につなげていくことができるのです。

ブラウン:
企業は営利組織とはいえ、単なるお金を生み出すマシーンではありません。それは、人と人とがつながるコミュニティであり、さらに言えば、企業組織そのものが人間と同じく一個の有機体です。戦略の策定や意思決定を行い、日々の業務をマネージする経営者は、その「頭」の部分です。これに対し「体」に相当するのは、一義的には現場で戦略を実行する従業員たちですが、実は経営者自身も身体性を有します。私たちの提唱する次世代のデザイン思考は、この頭と体を連結させ、組織全体の士気を高めることで、真に人間中心のパーパス設定を可能にします。その影響は従業員の働きがいを生み出し、その喜びは企業の顧客にも波及していくでしょう。

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"「デザイン」の力を経営に適用し、組織の「頭」に当たる経営者と「体」に当たる従業員を有機的につなぐことで、人間性と経営インパクトを両立します"(ブラウン)

岩渕:
日常の時間軸から外れて将来を長いスパンで問い直すのは、非常にチャレンジングな課題です。しかし、その先には、素晴らしい世界が待っている。今の若い人たちの世代が楽しくいきいきと働き、自己実現を図れるような、よりサステナブルな社会・企業のあり方を、志あるリーダーの方々とともに模索していきたいと思います。

ブラウン:
社会や経済のより良い姿を実現するため、私たち一人ひとりの果たすべき役割があります。長い旅路をともにするようにお客様と日々向かい合いつつ、日本から世界へ、あるいは現在世代から将来世代に向けて、変革を実現するリーダー育成に貢献していきたいと考えています。

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ティム・ブラウン

ENND PARTNERS CO-Founder & Principal Advisor

博報堂DYホールディングスの戦略事業組織であるkyuのVice Chairであり、世界的なデザイン・イノベーション企業であるIDEO のChair Emeritus(名誉会長)。
著書『Change By Design』は、世界中のビジネスリーダーにデザイン思考を紹介し、ベストセラーに。 『Harvard Business Review』、『Fast Company』、『Rotman Magazine』などの雑誌に寄稿しているほか、「Serious Play」や「Designers Think Big」と銘打たれた TEDトークは数百万人の聴衆を魅了している。クリエイティブ・リーダーシップに加え、健康や教育、テクノロジー、モビリティ、国際開発といった分野でデザインを戦略的に活用することに注力してきた。これらの功績が認められ、大英帝国勲章CBEを受章。

岩渕 匡敦

ENND PARTNERS CO-Founder & CEO

Boston Consulting Group 東京オフィスにて、 Digital BCG の共同統括、Marketing, Sales and Pricing プラクティスの日本リーダーを歴任し、2024 年より博報堂DY ホールディングスの執行役員に就任。
過去には、ソフトバンク、 i2 Technologies、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの企業で、ハイテク・メディア・通信、自動車、消費財、エネルギー産業の経営戦略やデジタル変革を多数経験。『Harvard Business Review』などへの寄稿や執筆多数。経済産業省「アートと経済社会について考える研究会」の委員を務める。欧州、米州、アジアを含む20か国を超えるグローバルでのプロジェクトの経験を持つ。

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